母親である妻は、我が子がこのままずっと学校に行かなくなり、家にひきこもってしまうことを恐れていた。当たり前の気持ちです。夫として、その妻の恐れの気持ちを否定してはいけない。私だってその気持ちはある。
妻は私に、「あなたは周りに不登校から社会復帰した人がいっぱいいるからいいけど、普通はそうそうないからね。」と言っており、いくら私が「子どもにおまかせしよう」と言っても、直ちに納得できるはずがない。だから、私は妻の気持ちを優先して、妻が子どもを家から出そうとする試みをすることには同意していた。
母親としての妻も、この状態で「無理やり学校の授業にださせようとする」ことは消耗でしかないことは、さすがに分かっている。
まずは、相談室に行って、スクールカウンセラーに相談することから開始した。まあ、夫もカウンセラーですが。でも、自分の子どもに関するカウンセリングはできない。倫理的にもできないですし、無理です。なんてったって、当事者ですから。当事者が当事者をカウンセリングすることなど、できません。
ともあれ、我が子も「母親と一緒にスクールカウンセラーとお話しすることはやってもいい」ということであったので、予約をとって出かけて行った。
あっ、私は同席していません。妻としては「しようとしない夫」として映っていたでしょう。「私がなんとかしなければ」という必死の気持ちだったと思います。
私が仕事から帰ると、妻から早速報告が。
学校のカウンセラーの先生としては、「この子はエネルギーがある」という第一印象であったとのこと。スクールカウンセラーは、本当に消耗してしまったり、心が折れかけている子ども達を見ているので、なおさらそう感じたのかもしれません。
正直、その見立てに、私も内心「ホッと」しました。どうしても、我が子びいきで見てしまいがちだからです。
だけども、その次の意見には賛同しかねました。
精神科の先生に診てもらった方がいいということです。医師に診てもらうこと自体には反対しません。妻は医療従事者で私は心理師ですから、精神科への敷居は低い。
しかし、問題は次の意見です。
「不安が強くて学校にいけない場合は、薬を飲むことで学校に来れるケースが多い。」「今、相談室に来ている子でも何人か服用しており、相談室に来れるようになった。」
確かにそういったケースはある。薬が有効となるケースがあることは知っている。不安症(不安障害)の方だ。社交不安症や広場恐怖症、全般不安症、場合によってはパニック障害の方に処方されることがある。
しかし、抗不安薬といえば「ベンゾジアゼピン系」であることが多く、依存性が高い。依存性が高いとは、薬をやめようと思っても、なかなかやめられないということ。
正直、エネルギーがある我が子に抗不安薬を服用させる必要があるのか?そこは納得できない。
しかし、母親である妻は「何もしようとしない夫」の意見には聞く耳がない。仕方がないよね。そう映っているんだから。
妻は子どもを病院へ連れていくことにした。